確認日: 2026年7月9日。

短い答えは、社内で生成AIを使う時は「何を入れないか」を丸暗記するより先に、「主語と固有名詞を消しても頼みたい作業が残るか」を見ることです。残るなら、担当者A、顧客X、金額帯、案件Yのように置き換えて使えます。残らないなら、本文を貼らずに、表の型や見出し案だけを頼む方が安全です。

この記事は、所属先ごとの許可範囲を断定するものではありません。最終判断は、社内の生成AI利用ルール、情報管理規程、契約や守秘条件、利用中サービスの設定を優先してください。

まず決めるのは「便利か」ではなく「主語を消せるか」

社内AI利用で最初に見るのは、文章の出来より情報の粒度です。会議メモ、顧客対応、売上整理、人事メモ、画像や資料のアップロード前では、同じ「要約したい」でも危険度が違います。

次の4区分に分けると、貼る前の迷いが減ります。

区分 AIへ入れる時の扱い
公開済み情報 会社サイトの公開文、公開済みプレスリリース、一般的な商品説明 必要な範囲で使えるが、引用元の確認は残す
ぼかせば使える情報 担当の流れ、議題、相談の種類、公開前ではない一般業務メモ 固有名詞、数字、契約条件を置き換えて使う
原文のままは止める情報 会議メモ原文、提案書の草案、画像付き社内資料 まず削る。削れないなら本文は貼らない
入力しない情報 個人情報、未公開数字、契約番号、APIキー、人事評価、病歴 AIに入れず、必要なら一般論だけ質問する
公開情報、ぼかせば使える情報、入力しない情報を三段階で整理する図
公開済み・ぼかせば使える・止めるの三段階で分けると、仕事中の判断が速くなります。

場面ごとに伏せ方は変わる

1. 会議メモ

会議メモでAIに残したいのは、決定事項、担当、期限、未決事項です。実名や社名そのものではありません。

元の表現 AIへ渡す形
山田さんがA社へ6月20日までに見積を送る 担当者Aが顧客Xへ今週中に見積を送る
役員会で新料金案を了承 会議で料金改定案が了承
契約更新の値引き条件を再確認する 契約条件の再確認が必要

この置き換えをすると意味がなくなる会議メモは、貼らずに「決定事項と未決事項を整理する表の型を作って」と頼む方が安全です。

2. 顧客問い合わせ

問い合わせ文では、氏名、電話、住所、契約番号、相談履歴が混ざりやすくなります。AIに頼むのは返信文の型であって、顧客本人の情報ではありません。

短い例:

  • 元: 「田中様から契約番号1234の返金相談が来ている」
  • 置き換え: 「既存契約の返金相談について、丁寧に保留と確認事項を伝える返信文を作って」

この時点で、誰の案件か分からなくしても返答文を作れるなら、AIに頼む余地があります。誰の案件か分からないと作れない内容なら、本文は入れない方が安全です。

3. 売上・見積メモ

売上、粗利、見積、値引き条件は、数字そのものが社外秘になりやすい領域です。AIに頼むなら、原因整理や確認項目の洗い出しまでにとどめます。

元の表現 置き換え後に頼めること
初月売上は1,240万円で目標未達 目標未達の原因候補を分類してもらう
A社だけ20%値引き 特定顧客に個別条件がある時の確認項目を出してもらう
来期の未公開計画を含む見積草案 原文は貼らず、見積前チェックリストだけ頼む

数字を消すと相談したい論点まで消える場合は、AIではなく上長、営業責任者、経理など社内の確認先へ戻します。

4. 採用・人事

採用メモ、評価、退職理由、面談記録は、個人の機微情報が入りやすいので、原文をそのまま入れない前提で見てください。

AIに頼めるのは、たとえば「面談メモの項目例」「候補者比較表のひな形」「評価面談で聞く質問の並べ方」です。氏名、所属、評価結果、健康情報、家庭事情が残るままの入力は避けます。

5. 画像や資料のアップロード前

画像付き資料やPDFは、本文だけでなく図、画面キャプチャ、ファイル名、共有先の履歴にも情報が残る場合があります。本文を削っても、画像に氏名や顧客名が写っていれば止めるべきです。

アップロード前に見る場所は次の順番です。

  1. ファイル名に案件名や顧客名が入っていないか
  2. 画像や表の中に氏名、番号、未公開数字がないか
  3. 共有リンクやコメント履歴が残っていないか
  4. そのサービスで誰に共有される前提か

迷ったら止まる3条件

次のどれかに当てはまるなら、AIへ本文や資料を入れずに止めてください。

  1. 固有名詞や数字を消すと、頼みたい作業そのものが成り立たない
  2. 顧客、契約、採用、人事、医療、認証情報など、漏れた時の影響が大きい
  3. 今使っているプラン、共有範囲、社内ルールを自分で説明できない

止めた時にAIへ頼めるのは、一般論の整理です。例: 「会議メモを短くまとめる見出しの型」「返金相談に返す時の確認項目」「提案書を読む順番のチェックリスト」などです。

会社で確認する場所

社内で迷いやすい時は、役割名で確認先を決めておくと動きやすくなります。

  • 情報システム部門: そのAIサービスを使ってよいか、共有設定や連携可否
  • 法務や契約担当: 守秘義務、契約条件、顧客との取り決め
  • 人事や労務: 採用メモ、評価、面談記録
  • 上長や案件責任者: 未公開数字、対外説明、相手への影響

「誰に聞けばいいか分からない」状態のまま本文を貼るのがいちばん危険です。確認先が見つからない時は、原文ではなく型だけ頼む運用へ戻してください。

OpenAIやChatGPT側で見る場所

2026年7月9日時点で、OpenAIはBusiness、Enterprise、Edu、APIのデータをモデル学習に使わない初期設定を案内しています。一方で、個人向けのChatGPTでは、学習への利用設定と、チャット履歴やメモリの扱いを別で見分ける必要があります。

ここで大事なのは、「設定があるから何でも貼ってよい」ではないことです。先に見る順番は次の通りです。

  1. 自社ルールでそのサービス利用が許可されているか
  2. 個人向けか、会社契約のビジネス向けプランか
  3. Data Controls や管理者設定で何が制御されているか
  4. 共有リンク、コネクタ、添付ファイルの扱いはどうなっているか

個人向け設定で学習を止めていても、会社の守秘義務が消えるわけではありません。反対に、ビジネス向け契約でも、社内で入力禁止にしている情報は入れない前提で考えます。

今日やる30秒メモ

最後に、今の職場向けにこの3行だけ残してください。

  • 入れてよいのは: 公開済み情報と、固有名詞を消しても意味が残る作業メモ
  • 止めるのは: 顧客、契約、未公開数字、認証情報、採用人事
  • 迷った時の確認先: 情報システム、法務、上長のどこか

この3行が決まるだけでも、会議後や問い合わせ対応中の貼り付け事故はかなり減らせます。